死神のカウントダウン

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私は特殊な能力を持って生まれた。
人に触るだけで、その人の寿命があとどのくらいなのか、秒単位までわかる。
それを知った両親は、この真っ白な部屋に私を閉じ込めた。
最初は安全のためだと言い聞かされていたが、しだいに私にもわかってきた。
両親は私という存在を世間に知られることを恐れ、そして私自身をも恐れていたのだ。

この部屋に入れられてから、10年も経つ。
外へ出て遊んだ幼い記憶すら、今ではほとんど失っている。
窓越しにしか太陽を浴びることしかない身体は、自分でも日に日に弱っていることがよくわかる。
残念ながら、自分の寿命も見えているのだ。

今日も窓際に置いてあるアンティークの椅子に腰掛けて、晴れ渡る空と流れる白い雲を見上げる。
そして人里から離れた場所を再認識させるように、どこまでも深い森が続いている。
いつものように窓の外を一通り眺めると、私は本を開いた。
この隔離された場所ですることといえば、本を読むことぐらいしかない。
だが、集中の意図が切れるとすぐに、目の前には人々の死のカウントダウンが浮かび上がる。
それも人さまざまで、数字の色や形、大きさも一つとして同じものはない。
私が今見えているのは全部で8つ。両親や親戚の人がほとんどだ。
最近2つほど減った。だから元々は10つ。たぶん、曽祖父母のだろう。
数字の横に名前が記されているわけでないが、直感でその数字が誰のものなのかはわかる。

そして今日、また一つ仲間入りするだなんで誰が予想しただろうか。

私はいつも用心のため、白い手袋を両手にはめている。
肌にじかに触れなければ数字は見えないのだ。

(榊月ミチル「死神のカウントダウン」より抜粋)
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